試作レビュー

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 プレイした作品の解説ページ。あまり更新されません。
 私の視点による作品の断面です。主にインターフェイスやフラグ構造とシナリオの関連性、加えて音響演出について感想を交えて解説するつもりです。
 → 詳しいスタンス



大型は個別に別ページに纏めたもの。小型は現在のところこのページ下部にあります。
あえかなる世界の終わりに小型 シナリオ系と見せかけた一本道キャラ萌えゲー。
十六夜れんか小型 狭い世界で綺麗にまとまった丁寧なAVG。
EVE -next generation X-小型 インターフェイスが全てを台無しにする、良くできた「続編」。
カラフルハート小型不可 12人のヒロインを製作者もプレイヤーも処理し切れない。
小型不可 設定だけで終わり。本編がない。
車輪の国、向日葵の少女小型 技巧的の一言に尽きるお花畑シナリオ。伝えたいことはない。
新・御神楽少女探偵団小型 ゲーム性を求めたAVG。その点は成功。
十次元立方体サイファー大型 ゲーム性を求めたAVG。その点で失敗。
でふこん☆わん小型 インターフェイスが折角のシナリオをダメにする。
とらいあんぐるハート123小型 終わらない世界。優しいテーマパーク。
days innocent / かえで通り小型 悲しい物語だけが感動系ではない。幸せで、泣いた。
果てしなく青い、この空の下で…小型 子供達の抵抗と成長。大人達の諦観と欺瞞と愛。
Phantom of Inferno / 吸血殲鬼ヴェドゴニア小型 二者択一のどちらにもそれなりの答えを用意した物語。
Fate/stay night小型 テンポに酔う長編アクション。空前の超大作……の一部。
Festa!! -HYPER GIRLS POP-小型 萌えキャラの裏に衒学趣味。伏線・引用が素敵。
星の王女2大型 世界の中の自分。自分のための世界。自分大好き。
White Princess小型不可 物語のないシナリオ。そしてバグ。
マブラヴ/オルタネイティブ小型 4時間で語れることを3年と20時間かけた君望コピー。
みらろま小型 くるくる動く高品質紙芝居。殆どが共通部分。
めぐり、ひとひら。小型 伝奇要素付きまったり恋愛物語。
Ricotte〜アルペンブルの歌姫〜小型 音楽がなければ良かった歌姫の物語。



あえかなる世界の終わりに
【可】 シナリオ系と見せかけた一本道キャラゲー。
 売れるものを作ることに関しては上手いメーカーです。一緒に仕事をしたニトロの影響か、似たような導入のガンアクションながら、しかしニトロのようなテーマはなくキャラ萌えの描写に終始した印象。それはそれで悪くないのですが、主人公が襲われる理由や各キャラクターの行動理由が不明確あるいは不自然で、話の都合によって無理のある動きをさせられている感が否めません。肝心のアクション面でも弱く感じます。こちらは原画のためでしょう。やはり難しい動きのある絵は描けないのでしょうか。加えて男キャラだけ明らかにやる気がなく顔と体がずれているのが目に付きました。
 何より酷いのが遅いスキップでした。最後の最後まで共通ルートで個別ルートが存在しないため、効率よく組んだ攻略を利用しない限りは同じシーンを何度も見せられ続けることになります。「めぐりひとひら」の頃には快適だったのにインターフェイスが退化しています。
 SF設定をいちいち読者に説明せずに、日常描写に当然のこととして入れていく手法は面白いと思います。例えば地下シェルターに住んでいることは冒頭でわざわざ説明されませんが、途中のイベントではそれを前提にした会話がありました。世界設定も意欲的で確かに凡百のキャラゲーとは違うのですが、それを生かしきれていなかったというのが総評になります。
 フラグ構造は極めて単純な必須フラグ方式。殆どの選択肢はダミーであり、各キャラの必須選択肢を全て選んでいればそのキャラのENDとなります。誰の条件も満たしていなければ柚子END。分岐点間際までルートを重ね合わせることが難しかったのも評価が低い一因です。この形式を取るのであれば、全員の必須フラグを同時に回収できるようにして、最後の時点でフラグが十分であれば選択肢出現→選んだキャラのENDという方式の方がストレスが貯まらないでしょう。この作品に限ったことではありませんが、同じ文章を何度も読まなければならないというのは総量が少ないことを誤魔化しているとしか思えません。



十六夜れんか
【良】 狭い世界で綺麗にまとまった丁寧なAVG。
 正木博士の心理遺伝説や勝五郎の再生が実話である世界。独自設定でもよいところを敢えて引用してくることは面白いと思います。演出も興味深いものが多く、夕暮れ時の会話シーンではメッセージウィンドウが1ページ進む毎に背景の空が少しづつ赤くなるなど、細かいところに拘っているのがよく分かります。
 シナリオ構成も優良。数本の物語をただ一緒にしただけの分岐つきノベルではなく、ゲーム世界の全体に関わる謎を各ルートに分散して明かしていくことには好感が持てます。バトル好きのツボにもはまりました。
 キャラの好感度で最後の戦闘の成否が分かれるシステムでした。一瞬またシナリオと関係のない無意味なフラグ設定かと思いましたが、考えてみればヒロインごとに定義される加算式のフラグを好感度と勝手に呼んでいるものの、より正確には(つまりシナリオ上は)ヒロインの主人公に対する傾倒度と主人公のヒロインに対する傾倒度の合計なのでしょう。最後の戦闘でパートナーとの絆が深ければ勝てるというのは悪くありません。しかもその絆の度合いによって勝ち方と負け方が段階的に変化します。
 ただこの「段階的変化」は曲者でした。終盤の好感度判定で3段階以上に分岐してそれぞれ別CGのあるバッドエンドとなるのですが、3段階以上とはつまり境界が2つ以上あるということなので、ギリギリまで分岐をひっぱることができず、中盤からやりなおしを要求されます。この点はマイナスポイントでした。



EVE -new generation X-
【可】 インターフェイスが全てを台無しにする、良くできた「続編」。
 今や廃れきったコマンド総当たり型インターフェイスです。それが悪いとは全く思わないのですが、本作の場合はそこに致命的な欠点がありました。
 ひとつ目の問題として、いたるところで誤操作を誘発しやすい仕様になっていることが挙げられます。まずマウスカーソルのポイントからターゲットの反応までに微妙なラグがあり、無駄に待たされるだけでなく、それまでに選択していたターゲットを再度選択してしまう問題があります。またアクションの選択の後にターゲットを選択してクリックするシステムなのですが、アクション選択がクリックでなくカーソルのポイントで確定する上、アクション選択アイコンはターゲットエリア内にあるため、ターゲット選択の際に意図しないアクションに変わってしまうことが多々ありました。
 もうひとつの問題として、選択コマンドと選択結果に整合性がとれていないことが挙げられます。これは恐らく意図的に行っているのですが、「話す」で目の前のキャラを選択し続けると、途中で会話の進行が止まります。その時、他のポイント(空や壁など)に対して「話す」コマンドを使用すると会話が続く場合があります。更には他のアクション(「調べる」など)を行うと会話が続く場合もあります。特にアクションの分類には殆ど意味が無く、どのアクションで会話ができるかは全く読めないものでした。つまりこのシステムをとっている意味は全くありません。なお選択の順番が「アクション」→「ターゲット」なのですが、どうしても画面クリック式を採用するのであれば、ターゲット側にアクションを表示しておいてそこをクリックさせる方が良いでしょう。
 以上の2点から、インターフェイスは最悪と言わざるを得ません。
 シナリオの方は覚悟していたほど悪い出来ではありませんでした。「EVE」である以上マルチサイトが前提となりますが、マルチサイトであることを利用した叙述トリックや演出は見事です。また物語上でもまずタイトルが「EVE」であることに必然性を持たせ、その他にも「BurstError」と重なる技術を中核に配置するなど、続編であることを意識した点が多々伺えます。それらがさほど無理に付けたような印象を与えず、自然に織り込まれているのが驚きでした。ただ登場人物の描写が変わりすぎたとは思います。全体的に登場人物と各組織は間抜けになっており、また「BurstError」の最大の魅力であった笑える描写は控えめとなっています。
 そしてSFに対してリアリティを強く言いたくはありませんが、(以下反転)
 まりなが逮捕された時点での警察の対応は流石に間抜けすぎます。あのような状況でまりなを容疑者と考えることはありませんし、銃を調べれば撃ったかどうかはすぐに分かります。
 この不合理な展開がなければ成立しないシナリオのため、全体としてシナリオには無理があると言えます。
 物語とは関係ありませんが、もう1点だけ気になる点があるので書いておきます。(以下反転)
 テロメアが短くなっていたことが確認されたクローンはドリーだけで、その後の追実験ではいずれもテロメアの修復が確認されているはずです。



カラフルハート
【不可】 12人のヒロインを製作者もプレイヤーも処理し切れない。
 まずシナリオが不可。これはいかにして上手く同時攻略をするかというだけのゲームであって、そういう意味ではそれなりに楽しめました。各キャラのイベントの発生する日がそれぞれ決まっており、好感度が十分なら「その日が発生する」というシステム。しかしかなり序盤の選択が影響してくるためあまり美しい同時攻略はできません。綺麗に重ねることができたなら評価も違っていたことでしょう。
 流行に乗って(或いは遅れて)12人出してはみたものの、処理し切れなかったという印象です。キャラごとの選択肢数・イベント数の差が大きすぎます。「バックグラウンドで動作しない」「音がオフにできない」「スキップが遅い」「よく強制終了する」と悪インターフェイスに加え、シナリオと同期の取れない雑フラグが更に評価を下げる駄作でした。



【不可】 設定だけで終わり。本編がない。
 意味不明の一言に尽きます。小学生の頃の私なら意味不明だと高尚であるかのように錯覚できたものですが、感性が鈍ったのか判断力が上がったのか、今となっては自分が読んで意味の分からないものは書き手の怠慢、あるいは力量不足としか思えません。何より話が途中で終わっており、設定だけ作って書き出したものの終わり方が思いつかなかったからお茶を濁したように見えます。
 期待していた樋口氏の音楽も今ひとつ。ゲームには良くあっていると思うものの、樋口氏にはもっと自己主張が強すぎてゲームのBGMとして不適当なくらいのものを求めていました。僕と僕らの夏の時の衝撃をもう一度味わいたいものです。
 「全部Aを選べばトゥルーエンド」という仕掛けは少し面白いと感じました。 



車輪の国、向日葵の少女
【良】 技巧的の一言に尽きるお花畑シナリオ。伝えたいことはない。
 数々のギミック・演出は非常に面白く、解説するとネタバレとなってしまうのが難しいところながら、教科書の見本のような技巧的なシナリオでした。
 ただし致命的な欠陥があります。パーフェクトでない人間は排除する社会とその社会への抵抗の物語。この背景世界の無理と、それを前提にしたことによる物語の無理です。登場人物は現実の人間と同じような思考パターンで動く(女の子の動きにはギャルゲー補正あり)のですが、背景世界はそんな人物で構成されているのなら到底起こりえないような不自然な社会システムを基盤としています。これは単に現実世界と違うという意味ではありません。構成する人間が現実と同じように動くなら、あのようなシステムでは既に自壊しているはずなのです。そしてその社会システムの問題を指摘して抵抗するのが物語の筋なので、始めからこれには無理があります。例えて言えば、自重で潰れるような構造の建築が既に建っている世界で、その構造の悪さを現実世界の力学を以って説くようなものです。個々にも気になる点はあります。例えば敵役の行動原理の謎です。何が目的で行動していて、何故行動を変えたのか。説明されることはありませんでした。
 数々のギミックと独創的な世界設定を導入するために、都合よく不自然を承知で構成したシナリオと感じられました。技巧点で大きく稼ぎ、総合すると「良」。ただし極めて異色の「良」です。
 スキップは流石に吉里吉里だけあって高速で快適ながら、章ごとにタイトル画面に戻る謎の構成のためその段階でスキップが止まることになります。一本道シナリオにも関わらず分岐点も比較的前の方。全員に手を出しながら進むことができて、最後に条件を満たしたキャラの中から選択できるべきでした。とは言えスキップをしているとすぐに終わるので、これに関してはさほど面倒ではありません。むしろ問題はスキップできないスタッフロールです。その後のエピローグのみ分岐するため、どのエンドになるかを検証しながらプレイする過程で10回以上もスタッフロールを見せられました。



新・御神楽少女探偵団
【良】 ゲーム性を求めたAVG。その点は成功。
 まずは新ではなく初代と続の話。キャラの設定を見て事件が起こる前から犯人を予想するメタ推理が、これほど通用するミステリは最近ではお目にかかれません。最初にあの人が登場した時にラスボスに違いないと思ったら本当にそうでした。定番のみで構成された安心できる内容とも言えます。全体の繋がりが希薄で、話の順番を入れ替えても全く問題ないのが残念です。もっと最初から伏線だらけで、徐々に明らかになっていく敵の組織の姿、そして徐々に進行していく少女と御神楽先生の関係……という話を期待していたので少々がっかりしました。なお推理トリガーは理不尽です。萌え要素を全面に押し出した探偵ものゲームとしてはミッシングパーツの方が良いですね。
 続いて新の話。極端な原作破壊にファンが怒りそうですが、ファンでなかったので許容範囲内でした。グロ描写や寝取られがそこそこあって満足です。ミステリとしてのレベルは前作より酷く、推理トリガーの理不尽さも増しています。具体的にどこが悪いかを語るとネタバレになってしまうのが難しいところですが……。
 末節の気になるところ。「登場する神父が堂々と恋愛や結婚をしており、礼拝堂の横に懺悔室」という点に少し思うところあって調べてみました。つまりカトリックでもプロテスタントでもない宗派ではないかという疑いです。そういう話も聞いたことがあったもので。簡単に調べた限りでは、やはりカトリックでは神父は結婚できませんし、カトリックの教会にあるのは聖堂で、礼拝堂はプロテスタントです。懺悔室があるのはカトリック教会です。現実にここ十年くらいの傾向として、神父でも結婚できる国が増えているようではあるものの、御神楽の場合は舞台は大正。当時の小説などを見るに日本で一般的だった神父というのはやはりカトリックで、イギリス系の結婚できる神父様が布教にきていたという記述は見つかりませんでした。作品にはあまり関係ないのですが。



でふこん☆わん
【可】 インターフェイスが折角のシナリオをダメにする。
 結論から言うと読みにくい、それだけでした。理由を考察してみます。
 まず普段通りのクリック速度(計測してみたところ秒間4回程度)ではゲームの側が反応しませんでした。秒間最大2回程度しかページが送れません。そのためどうしても読み進むのが遅くなり、スキップを使用せざるを得ません。そのスキップもFキーという珍しい仕様で押しにくく、またスキップを開始したらしたで今度は止めにくくなっています。同じFキーでは止めることができず、Enterか左クリックが必要なため、片手操作は不可能でした。止めにくいというのがクセモノで、飛ばしすぎて読めない部分が出てきてしまいます。
 Ctrlを押している間のみスキップする仕様のタイトルの場合、私は小刻みにCtrlを押したり離したりしながら進みます。これが使えないだけで極端に読みにくくなります。メッセージウィンドウが動くことも読みにくくしている原因ではないかと思われます。
 なおホイールによるバックログは、(たとえボイス音量が0であっても)音声再生が終わるまで使用できません。スキップしすぎて少し読み返しを繰り返す私には最悪の仕様(バグ)でした。
 肝心のシナリオですが、これは意外とまともでした。ごく普通の(従ってインターフェイスの欠点を挽回するほどではない)キャラ萌え型個別シナリオで、オーソドックスな好感度システムは効率化のやりがいがあります。 いくつか内部フラグに誤記(フラグ名間違い)と思われるものがあったのが気になりますが、プレイにあたって支障のでるものではないので修正しないでもらえると助かります。
 特に目を引く点はありませんが、不可にするほどでもないという総合評価です。



とらいあんぐるハート123
【優】 終わらない世界。優しいテーマパーク。
 人気があるらしいということしか知らずに、ただのありがちな恋愛ものだろうと思ってプレイしたのですが、見事に良い方向に裏切られました。登場するヒロインたちは超人的な武術家や幽霊や吸血鬼……と実に多彩な非日常。そんな人物が当たり前に存在する"ちょっとだけ"現実と違う世界が舞台です。物語や事件は存在するのに何故か希薄で、この非日常的な世界での日常を楽しむことがこのゲームの主幹となっています。言ってしまえばこの極端に優しく嘘っぽい世界こそが作品であり、それぞれの登場人物も世界の一部でしかありません。女の子と仲良くなったらエンドではなくその後も話が続くのは、まさしく仲良くなることが目的でないからでしょう。
 シリーズを通して前述の姿勢が貫かれていることと、それまでの作品の登場人物が引き継ぎ様々な形で登場することがシリーズとしての纏まりを高め、全て合わせてひとつの完結したものとなっています。これからプレイされる方には1,2,3及びファンディスクを合わせた「とらいあんぐるハート123」をお薦めします。
 ただ、作中に歌姫が何人か登場するのですが、悉く(声優の)歌が下手なのはちょっと頂けないですね。



days innocent
【優】 悲しい物語だけが感動系ではない。幸せで、泣いた。
 閉じた世界、田舎の村を舞台に柔らかな日常生活が展開されます。陵辱どころか事件も人間の対立も克服すべき課題も一切なし。優しい世界を味わうという基本的な作品の姿勢は上に挙げた「とらいあんぐるハート」シリーズと類似していますが、こちらはプレイヤーの代理として作中世界を見るもの(主人公)が存在せず、プレイヤーは勝手に進行する彼女たちの生活を神の視点からただ眺め続けます。プレイヤーの「目」が全く主観を持たないため、全編を通して会話文しか存在しない特殊な構成となっており、またメインキャラクターは穏やかな女の子ばかりという点も特徴的です。非現実的な萌え要素は完全に排しながら、しかしどこか現実感に乏しい不思議な味わいがあります。
 全画面限定・読み返しなし・キーボード非対応・回想モードなし・CGモード垂れ流し、と当時としても不親切なシステムだったため他人に薦めにくいのですが、今までプレイした中で最高のエロゲーはと聞かれれば、私は真っ先にこれを挙げるでしょう。悲しい出来事を起こさずに私を感動させたことは特筆に価します。
 「かえで通り」というタイトルの続編がありますが、こちらには男性の主人公が登場します。優しさだけで構成された世界はそのままに、「days innocent」では永遠の少女として描かれたヒロインたちに成長を与え、箱庭の世界に入り込んだ主人公が優しく夢の終わりをもたらすお話です。



果てしなく青い、この空の下で…
【良】 子供達の抵抗と成長。大人達の諦観と欺瞞と愛。
 過疎が進む田舎の村を舞台に主人公と少女たちの一年が描かれる、と言ってしまうとつまらない物語のようですが、会話中心のAVGが多い中、地の文による描写が豊富かつ美しく、これこそノベルゲームだと思える作品でした。
 大人が沢山登場すると誰かが指摘していましたが、主人公がいてヒロインがいてその周りに都合の良い世界があるのではなく、はじめにリアルな世界があってそこに主人公を含めた人物達が配置されています。主人公はあくまで無力な子供であり、大人の事情で動く世界の中で精一杯の抵抗をします。主人公が中心でない世界だからこそ際立つ主人公たちの青春が見事に描写されています。
 インターフェイスにはやや不満があります。しおり選択式の古いスタイルはともかく、同一しおりで「特定エンドを見ないで最後まで進む」ことでのみ得られる追加シーンがあり、失敗すると最初からやりなおさねばなりません。また良い寝取られがあるものの、シーン回想はなし。縦書きのメッセージウィンドウは良し悪しですが試みとしては成功したと思います。



Phantom of Inferno / 吸血殲鬼ヴェドゴニア
【優】 二者択一のどちらにもそれなりの答えを用意した物語。
 両作品に共通した事項として、読者の超人願望を満たしつつ、爽快なだけではなくどちらかといえば陰鬱な世界。エロゲーには珍しい「葛藤」をテーマとしており、アクションやバトルはそのための布石に過ぎません。主人公は常に日常を渇望しながら巻き込まれた世界から逃れられず、最後には全てを得ることはできないことを悟り何かを諦める。そんな物語です。完全に先が読めるありふれた物語に引き込まれるのは文章演出の妙と言えるでしょう。
 Phantomでは演出は文章に頼りすぎ、AVGとしての動きを捨てています。インターフェイスは最悪で、全画面限定・スキップなし・エフェクトカット不可。それでも引き込むシナリオも、当時だからこそ受け入れることができたのでしょう。その点ヴェドゴニアでは演出力が増し、ウィンドウモードとメッセージスキップを導入。最後の戦闘アクションに主題歌を重ねる手法を定着させた功績にも触れないわけにはいきません。ただし仮面ライダーを意識しすぎたためか、区切りごとにオープニングとエンディングを挿入されるのはテンポを阻害していると感じました。その後、この形式も業界に広まることになり、私としては苦々しく思っています。



Fate/stay night
【優】 テンポに酔う長編アクション。空前の超大作……の一部。
 一言で言えば「傑作」。完全キーボード対応でカスタマイズ性の高いインターフェイス、吉里吉里のくせに良好なレスポンス、シナリオスキップとシステムは申し分なし。そして立ちキャラの動きと演出はマブラヴをも凌駕します。これが個人的には傑作を傑作たらしめるところだと思っています。
 誤解を覚悟で言ってしまうなら、私は物語はそれほど素晴らしいとは思いません。確かに文章はシンクロできれば心地よいと思います。ギミック、文章演出、AVGとしての分岐設定や道場を含めたシナリオ構成は秀逸でした。王道展開の積み重ねでありながら読者の裏をかくのも見事です。しかしデウスエクスマキーナは大嫌いなのです。はじめの世界設定にも無理が大きいと感じられました。何より四番目のルートを省略して三番目に無理矢理纏めたような印象が拭えません。というのも第三ルートではあくまで第三ルートに決着をつけただけであって、作品全体を通したテーマを解決した形には見えないからです。ずっと主人公の物語であったところが、最後になって急に他人の物語になったと言えばいいでしょうか。あるいは第三ルートはルート自体ののテーマと全体テーマの乖離が目立つ、と言った方が正確かも知れません。いずれにせよ作品としての一貫性に欠ける気がします。
 整理すると、本作は
  ・予め提示された目前の目的を果たしつつ、作品の核となる主人公の問題点を提示する第一ルート(セイバー)
  ・冒頭から引っ張った例の人物の正体を明かしつつ、主人公の問題点に許しを与える第二ルート(凜)
  ・物語世界の中心にある聖杯の秘密を明かして、他人が救済される第三ルート(桜)
という構造になっています。作中には主人公の対照となる敵が精神面と能力面で1人ずつおり、それぞれ第一ルート、第二ルートの最後に対峙しました。しかし主人公が精神面で一定の悟りを得るのは第二ルートであり、第一ルートでは自己を克服する形となっていません。第三ルート最後に少し入ってきてはいますが、ここで、
  ・養父の過去と絡めて、主人公と敵の問題を共に解決する第四ルート(イリヤ)
が存在したとすると、主人公の救済を作品全体のテーマとして自然なバランスが取れると思われました。おまけに最後がイリヤであれば、ヒロインを確定せずに曖昧な関係のまま将来へ続く(ホロウのような状態に続く)形のエンドにできるでしょう。どうせ後から都合の良い設定を出して解決する形なのですから、完全に八方丸く収まる結末で良かったのではないかと思います。
 それにしても日本語から漢字だけをそのままの語順で抜き出すくらいなら、なぜ日本語で書かなかったのでしょうか。
 【後日追記】 PS2版で中国語に順じた並びに訂正されていました。ということはやはり格好悪いと思ってくれたようです。ただ、シナリオ中では直されていたものの、武器データの方がそのままです。



Festa!! -HYPER GIRLS POP-
【良】 萌えキャラの裏に衒学趣味。伏線・引用が素敵。
 実質的にはキャラごとに個別のシナリオとなる形ながら、ショートシナリオを選択していくゲームシステムのおかげで統一感はさほど失われません。どのルートでも全キャラがしっかりと絡んできます。核となる街の設定を各ルートで上手く使い、それとは別に各々の超えるべき壁を個別に設定する構造で、敢えて言うなら無理に統一感を出そうとしたようには見えました。
 シナリオには際立って斬新な点もないのですが、伝統的な手法を取り入れた腰の入ったシナリオに、恥ずかしくない程度にぺダンティックな会話、思い切った多数のパロディと引用も魅力的でした。ポイントは「さりげなさ」でしょう。種々の引用や伏線のさりげなさが心地よいのです。
 特に琴子シナリオが気に入りました。ヒルベルトの諸問題からの一連の解説は途中まで現実に即した話だったため、ベルトホルトという聞きなれない数学者が出てきたときには検索してしまいました。するとどうやら「SenseOff」からの引用の模様。残念ながらこちらをタイミングを逃して未プレイのためどこまでが引用なのかは分かりませんが、最終的に愛に繋げるくだりはなかなか素敵です。そしてこのルートで雑学としておまけのように説明していた不確定性原理を、最後のルートで当然のように(そしてやはりさりげなく)シナリオに絡めてきたのは見事でした。古文の素養がないために、そちら方面での出来が判断できないのが悔やまれます。
 ゲームシステムの都合上、同じシナリオを何度か読まされることになります。そのためバックグラウンドで動かず、エフェクト表示と一部の効果音再生が終わるまで進めない仕様は致命的でした。エンディングもスキップできません。たらいを落とす演出もくどすぎます。もう少し使いどころを絞っても良かったのではないかと思われました。ただこれは観測者たる主人公の心情が世界に反映されているとすると深読みが過ぎるでしょうか。
 インターフェイスの問題さえなければ、久々に優と言える作品でした。
 他人と話していて、お互い認識していなかったパロディがあることに気づきました。パロディ満載のギャグものにはありがちな話ですが、楽しみきるにはかなり素養を必要としますね。全て味わう必要もないのでしょうけれど。



White Princess
【不可】 物語のないシナリオ。そしてバグ。
 わざわざ延期なしバグなしを宣言してスタートしたのに、延期3回の上、発売日から修正パッチ。半年後の3度目の修正をもって完成。ここまで来ると、最早笑い話です。キャラごとのボイスの音量の差など、1度でもプレイすれば気付きそうな問題に何故気付かないのか理解できません。
 シナリオは中身なし。どこかで見たシーンを繋ぎ合わせた代物で、作品の核となる要素が存在しません。ただしヒロインのカップリングにより、完全に各ヒロインのルートが分離することを避けたことは評価できます。それがフラグに繋がり、ある程度のゲーム性を持たせることに成功しました。序盤のランダムフラグは不要だったと思いますが、攻略性にはそこそこ満足できました。ただし修正のたびに少し変わるのは頂けません。
 それにしても、もう少し英語の喋れる声優はいなかったのでしょうか。日本人訛り丸出しのカタコト英語を聞いて「流石ハーフ」なんて言われたら、こちらが恥ずかしくなります。何より発音以前に英文自体がたくさん間違っていませんか。それがネイティブの文法なのですか。



マブラヴ/オルタネイティヴ
【良】 4時間で語れることを3年と20時間かけた君望コピー。
 無印とオルタネイティヴを合わせて1つの作品と解釈した場合、1作目発売前にそれを告知しなかったのは詐欺といっても過言ではありません。しかしそれぞれ単独の作品と解釈した場合はそれ以上に問題です。無印は伏線だけ残して途中で終わり、オルタは無印をやっていないユーザーには理解できない設定を当然のものとして使用しています。従ってここでは合わせて1つの作品とする立場から見ていきます。
 とても長いプロローグであるエクストラは、それ単体ではありがちな学園恋愛ものとして纏まっています。これだけを1つの作品とすれば、特に目を見張るようなシナリオではないものの、テンポの良い掛け合いと意欲的な動きの演出で十分に良作以上と言えるでしょう。ボリュームの面でも平均以上です。
 アンリミテッド及びオルタネイティブは、ひとことで言えば背景設定が違うだけの君望でした。主人公が無駄に悩み、結論を出したと思えば逆行し、それが延々と続くだけの物語です。何度もアップダウンを繰り返しながらずるずると続けなければいけないのは、見せ場のシーンとして用意した断片を全て組み入れる必要があったからでしょう。主人公の成長を核とする以上、主人公が答えを見つけてしまうと物語が終わります。終わらせないためには新しい悩みを得るしかありません。しかし本作では答えを見つけたはずの主人公が次のシーンではまた元に戻り、成長イベント自体がなかったかのように扱われます(ただし次のハイライトシーンでは前のシーンのことも唐突に思い出します)。
 物語には最適な長さというものがあると思います。伝えたいテーマが先にあるのなら、それに合わせて余分な肉は削るべきでしょう。
 そしてオルタネイティブにもやはりTRUEENDはありません。シナリオ構成に関して言えばこれほどまでに悪い作品も珍しい程です。
 演出とそのためのプログラムの凄さは否定できません。それだけで「良」をつけられます。スキップのできない強制同期進行の演出は普段なら大きく評価を下げるところですが、飛ばしたいと思わなかったため問題がありませんでした。



みらろま
【良】 くるくる動く高品質紙芝居。殆どが共通部分。
 細かく動く立ちキャラや効果音など総じてハイクオリティながら、インターフェイスがゴミでした。動作自体は非常に軽快です。つまりプログラマには一切問題はありません。しかし折角の軽快動作がすぐに止まるスキップのせいで台無しになっています。スタッフロールもスキップできません。他のゲームにも言えることですが、アイキャッチを挟む意図が未だに分かりませんし、そこでスキップを止める意図はもっと分かりません。共通部分がなければスキップもあまり必要ないものの、個別ルートに入ってからも半分以上が共通シナリオ。同じシーンを何度も何度も見せられます。
 5人分のバラバラなノベルをまとめただけに陥らなかった点は評価します。ひとつの同じ事件に対してヒロインごとにそれぞれ異なったアプローチをすることは、ひとつの作品としての纏まりがあって好ましく思いました。
 フラグは極めて単純で全ての選択肢がフレーバー。キャラ選択5回中3回選択することと、5回の中で各キャラ1回あるキーイベントを見ることがそのキャラのエンド条件。誰の条件も満たさなければBADです。始めから簡単さを売りにしていることもあり、それはそれで悪くないでしょう。



めぐり、ひとひら。
【優】 伝奇要素付きまったり恋愛物語。
 物語、文章、音楽、演出と全てがとても良く纏まっています。久しぶりにボイスありでプレイしました。システムも当然の機能の他に「前選択肢に戻る」「次選択肢へジャンプ」「エンディングスキップ」があり、2003年度の中では一番快適。普段見たくもないエンディングを飛ばせなくてイライラしている私ですが、今回のエンディングは見るつもりだったのに間違えてキャンセルしてしまったのでやり直しました。
 主人公の行動ではなく物語の展開を選択する形式のノベルは、出てもよいのに見かけないと思っていたところでした。ウィンドウ形式も意欲的です。最近はメッセージ枠に数行表示を基本とした会話中心のものばかりになってきていて少々残念だったので、他のメーカーもこういったものを作ってくれることを期待します。伝奇ものと見るか恋愛ものと見るかで評価が分かれそうな物語ですが、私には本欄の表題の通り後者と感じられました。時間に余裕のない時にはお薦めできません。
 ピアノ即興曲が大好きなので音楽が特に気に入ったのですが、この人が関わった作品は他にあるのでしょうか。検索しても見つかりません。



Ricotte〜アルペンブルの歌姫〜
【可】 音楽がなければ良かった歌姫の物語。
 再三に渡って歌唱力抜群と描写されるにも関わらず、ヒロインの歌が極端に下手な(むしろわざと下手に歌っている節がある)ことに加えて声が汚い(わざとらしいアニメ声)ため、物語の核となる「歌姫」としては失格と感じました。万人に対して歌の上手さを演出するのであれば実際の歌を入れなければ良かったのです。音楽もリトルモニカ物語などの頃と比べて退化している気がしてなりません。主人公が演奏するピアノも歌姫と同様に核となるはずなのですがリアルさが感じられません。最大の問題点は音の強弱です。pianoforteの名前の通り、強弱をつけてこその楽器だと思います。ペースの緩急も必要です。
 主人公の性格・能力が異なる2本のシナリオを用意したことは面白い試みでした。主人公はRuneらしく爽やかに変態です。その点では満足しています。



スタンス
 私の基準ではネタバレはありませんが、購入のための参考にすることはあまり考えていません。また最低限メーカー公式サイトにある程度の情報は知っていることを前提としています。理想的にはプレイした上で私と異なる解釈をした人、もしくは制作者に読んで欲しいと思います。なお万人が同じように感じるであろうことは書いていません。何か特別に書きたいことがあったものについてのみ述べるものです。
 シナリオとストーリーの区別を意識しています。私にとってシナリオとは物語の見せ方です。演出、構成、物語を総合したものが一つのシナリオと考えています。物語のみを見て語ることはありません。またシナリオを楽しむためのインターフェイスを重視しています。シナリオが良くてもプレイが苦痛になるインターフェイスであれば評価は低くなるでしょう。
 評定はフルレンジです。可であれば本当に許せるレベルであり、許せなければ不可、何か特に良いと思える点があれば良、極めて良いと思えれば優としています。



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